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[朝の目覚めに] 〜深森〜

れん/作   しな/画

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「・・な・・いよ!・・・きな・・・いよ!」
深い眠りについていた俺は、誰かが呼ぶ声にゆっくり脳を覚醒させる。
「おきな・・いって・・・!ちょっと!」
遠くから聞こえてくるような声は、だんだんと大きくなり、やがてはっきりと聞こえてくる。
脳は活動を始め、今の状況を把握しようとするが、しかし瞼はやたらと重く開かない。
(・・あ〜・・・眠い・・無理・・・)
もう一度意識が深いところに落ちようとしたその時、声の主の怒声が響いた。
「起きろッつってんのよ!このバカ!!!!」
ばふん!!!
何かフワフワした布状のものが、いきなり顔面を叩いた。そして鼻と口を塞ぐが如く、押さえつけてくる。
「・・むぐ!!むぐぐぐぐぐっ!!」
俺は息苦しくなってパタパタと手を泳がせるが、布状のモノは離れることなく、むしろ押される一方で。
「お〜き〜な〜さ〜い〜〜〜〜っ!」
・・・グイグイと更に押さえつけられる。
(これはマジで死ぬ!!死ぬから!!)
いい加減我慢出来ず、俺は押さえつけていた布を掴むと、力任せに引き剥がした。
瞬間、入り込む酸素。
「・・はぁ・・はぁ・・おまっ・・俺を殺す気か深森!」
息を整え、押さえつけていた人物に向かって文句を言う。
手元を見ると、自室のソファにあったクッションだった。
「・・・・もっと優しく起こせないのかお前は。」
俺は寝起きの気だるい身体を起こし、ベッドの脇に佇む深森を睨んだ。
「起きないアンタが悪いのよ。もう10時よ!・・・こっちは今日も仕事いっぱいあるんだから、さっさと起きてよね!」
深森はキツめの瞳で俺を一瞥し、そう冷たく言うと、窓辺のカーテンを開け、窓を開け、『仕事』を始めだした。


この屋敷に来て、もう一週間が経った。
普通の一般人だった俺が、何故こんな状況になっているのか未だに信じられないが、今の俺はこの屋敷の主で、そしてこの屋敷には、俺の世話をする9人のメイドさんが居る。
今、俺の爽やかな目覚めをぶち壊してくれた彼女、森 深森もメイドの一人だ。
「あ〜もうホント嫌。なんで私がアンタの世話なんか・・・」
メイドならぬ呟きをブツブツ言いながら俺の着替えをクローゼットから出している。顔はとても嫌そうだ。本気で嫌そうだ。
それも仕方無いとは思うが・・・
深森は俺の幼馴染で、お互いの事は小さい頃から熟知している間柄だ。
なぜ深森までもが、こんな状況になっていて、俺の世話なんてしているのか。
「そんなに嫌なら、こんな仕事しなければ良かったじゃないか」
ブツクサ言ってる深森に言ってやる。
「っ・・う・・うるさいわね!どうでもいいでしょそんなこと!」
遠まわしに聞いてみても、返って来る答えがこれだ。
(よくないだろうが・・・可愛くないなぁ・・)
思わず心の中で突っ込む俺。
(そういや・・小さい頃は全然そんなこと無かったよな)
小さい頃は、もっとこう・・素直で可愛らしかった。
家が隣同士だった所為もあって、まるで兄妹のように四六時中一緒だった。
(ゆうちゃん、ゆうちゃん・・・って、俺の後付いて歩いてたのに・・)
俺は、不満そうに仕事をする深森の姿を眺め、昔の面影を探す。
栗色のセミロングの髪がさらさら揺れている。
不満そうに歪められた目元は、くりくりと大きく、あの頃の面影を残してはいるが・・・
胸元が大きく開いていて、スカートも短めのメイド服に身を包んだその身体はあの頃とは違い、女としての色気が備わっている。
幼馴染の贔屓目を除いても、・・・可愛いとは思うのだが。
「なにジロジロ見てんのよ。気持ち悪い。」
俺の目線に気付いた深森は、不愉快全開の顔で俺をまた睨む。
(今じゃこれだもんな・・・)
深いため息を漏らし、俺は小さく呟いた。
「やっぱ可愛くない・・・」
「何か言った?!」
呟きを聞き漏らさなかった深森は、鋭く俺に突っ込んでくる。
「・・・いいや・・何でもない」
その迫力に負け、言葉を濁した俺に、深森は眉をしかめただけで追求してこなかった。
「それより、さっさと着替えてよ!結乃が朝ごはん用意して、ダイニングで待ってるんだから。ほら、いつまで布団の中にいるつもり?」
着替えを用意し終えた深森は、そう言って掛け布団を掴み、俺から掛け布団を奪おうとする。
その行動に俺ははっとした。
(あ、いや、それはマズイだろ!)
俺は慌てて布団を掴み、抵抗した。
「ちょっと何?まだ寝る気なの?!」
「ちがう!これはその・・あれだ!」
「なによ。」
朝勃ちしてるなんて、正直に言えるハズがない!
「あ〜なんだ・・下にパジャマ着てないんだよ!パンツだけ!」
これは本当のことだ。
「だから何なのよ!男のクセにパンツ見られるのが嫌なの?!」
せめて何かジーンズでも履いてる状態ならまだしも、パンツだけなんてバレバレだろうが!
「そう!嫌なんだ!!隙間から出てるかもしれないだろ!!」
「は?!何がよ!」
「俺のチン・・・」
「バカーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
ばちーーん!!
深森は顔を真っ赤にして俺の言葉を遮って、思いっきり俺の頬にビンタを食らわした。
「・・・・〜〜っっおまえ・・・・ビンタかよ・・」
「へ、変なこと言おうとするからでしょっ!・・と、とにかく!私まだやることあるから、それやってる間に着替えてよね!」
深森は微妙に目線をずらしながら着替えを俺に手渡す。
「見るなよ?」
「見ないわよ!!!!」
深森は顔を真っ赤にして否定すると、いそいそと、どこに置いてあったのか知らないが、脚立を部屋の真ん中に用意し始めた。
「・・・・何やってんだ?」
「・・・・昨日、電灯、壊れちゃったんでしょ?」
そう言って、俺の方に顔を向けないまま、用意した脚立にずんずん昇る。

そういや昨日はここで、ぬこと杏が暴れ始めて大変だったんだ。
暴れだしたあいつ等を止めるのは至難の業だった。
その光景は壮絶すぎて語れない。

それはさておき。

何気なく深森の様子を見守っていると、初めはずんずん昇っていた深森の足が、次第にゆっくりになる。
高いから慎重になってるのか。
「俺がやろうか?」
やたらと高い天井のこの家では、電灯ひとつ換えるのも、
女の子一人でやるには結構危ない仕事だ。
そう思って声をかけてみたが、
「いいわよ。これも仕事だから。アンタは早く着替えてよ!」
まるで邪魔だと言わんばかりに、冷たくあしらわれた。
(何言ってもダメだなこりゃ・・)
また一つ溜息をついて、おれはのそのそと布団から出て、ジーンズに足を通す。
しかし、着替え途中も、目線はつい深森へ行ってしまう。
うまく電灯がはまらないのか、脚立のてっぺんで、かちゃかちゃやっている。
少し目線を下に落とせば・・・短いスカートから覗く足が震えていた。
(やっぱり怖いんじゃないか・・素直じゃないな、まったく)
「おい深森、やっぱ俺が」
「!!!」
脚立の下に移動した俺が声をかけた瞬間、深森の身体がピクッと震えて、深森はバランスを崩した。
「深森!!!」
俺は慌てて、落ちてくる深森をキャッチする。だが勢いに負け、尻餅をついてしまった。
「・・・ってぇ・・・おい深森、大丈夫か?」
後ろから抱きしめる形でキャッチしたので、深森の様子はわからない。
「深森?」
後ろから覗き込むと、少し涙目になっていた。怖かったらしい。
「大丈夫か?」
もう一度聞くと、キッとこっちを振り向き上目遣いで睨んできた。
しかし、涙目の所為か、全く迫力が無い。
「アンタねぇ!いきなり声かけたらビックリするじゃない!!ばか!」
「わりぃ・・でも、そんな口利けるなら、怪我は無いみたいだな。」
ほっとして俺は笑った。
「・・・・あ」
深森が小さく呟いた。
「?」
見つめていると、みるみる頬を赤く染めて、ふいっと目を逸らした。
深森の手が、深森の腰に手を回していた俺の手に触れる。
「もう・・大丈夫だから・・離して」
小さく搾り出すように、深森は言った。
「あ」
そこで俺はこの状況に初めて気付いた。
俺の腕の中にすっぽり入った深森は、やはり華奢でふわふわした女の子だった。
深森を見ると頬を赤らめて、うつむいて、大人しくしている。
(あれ?・・深森が、カワイイ?)
いつもの勢いが見られない深森に、俺は少し動揺した。
俺の頬に熱が集まるのが分かった。
「み・・深森・・」
腰にまわした手に力が籠る。
「あ・・」



深森は抵抗もせず、なすがままに身を任せる。

俺は更に腕に力を込め、深森をぎゅっと抱きしめた。
髪に顔をうずめると、シャンプーの香りなのか、柔らかい匂いが鼻をくすぐった。
深森が息を呑んだのが分かった。
その緊張がうつったのか、俺の動悸も少し早くなる。
身体同士が密着しているので、お互いの動悸が分かる。
深森もきっと・・同じ気持ちだ。
「深森・・俺・・」
この何とも言えない気持ちを言葉にしようとしたとき、
「・・・・んん?なにこれ?」
深森が突然眉根を寄せて呟いた。
「どうした?」
「腰に何か当たるんだけど・・」
「腰?」
二人で原因を究明すべく、視線をそこに落とす。
「・・・・あ」
「・・・!!」
一瞬二人でフリーズする。
そこには、まだまだ硬直している自分の分身がいるわけで・・・
「あ、いや、これは男の生理現象で、あさだ・・」
「何考えてるのよ、ばか!ヘンタイ!!スケベーーーーーーーー!!!!」
どがぅっっ!!!!
言い訳も言い終わらないうちに、深森のグーパンチが俺の顎に見事にヒットした。
(今度はグーパンかよ・・)
「電灯はアンタが変えておきなさいよね!!!・・もう、ほんっと、サイテー!!!」
立直るのに時間がかかりそうな俺に、捨て台詞を吐いて、深森は逃げるように部屋を出て行った。
「朝勃ちでグーパンされるなんて理不尽だ・・」
残された俺は、何度目か分からない大きな溜息を吐いたのだった。
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